AIバイブコーディングの世界が急激に進化する2025年、多くのエンジニアが「どのAI IDEを選ぶべきか」という疑問を抱えています。私自身、フリーランスエンジニアとして1年間にわたってCursorとWindsurfの両方を実際に使い込み、数十のプロジェクトを通じて両ツールの真価を検証してきました。
この記事では、単なる機能比較にとどまらず、実際の開発現場での使用感、パフォーマンス、そして収益性への影響まで、体験者だからこそ語れる生の情報をお伝えします。
はじめに:なぜCursorとWindsurfなのか
AI IDE市場の現状
2025年現在、AI統合開発環境(IDE)市場は群雄割拠の状況です。GitHub Copilot、Cursor、Windsurf、Clineなど多数のツールが存在しますが、その中でもCursorとWindsurfは特に注目を集めています。
注目される理由:
- VSCodeベースでありながら独自のAI機能を深く統合
- 単なるコード補完を超えたエージェント機能
- 活発な開発コミュニティと頻繁なアップデート
- 個人開発者から企業まで幅広い支持
筆者の検証環境
本記事は以下の環境での実証データに基づいています:
検証期間: 2024年4月〜2025年6月(約14ヶ月間) 開発プロジェクト:
- React/Next.js Webアプリケーション(15案件)
- Python機械学習プロジェクト(8案件)
- Node.js API開発(12案件)
- モバイルアプリ開発(Flutter、React Native)(6案件)
使用デバイス:
- MacBook Pro M2 Pro(メイン開発環境)
- Windows 11 デスクトップ(検証用)
Cursor:次世代AIエディタの実力
Cursorの基本概要
Cursorは、VSCodeをベースに開発されたAI統合型コードエディタです。2025年2月のバージョン0.46では大規模なアップデートが実施され、AIエージェント機能やWeb検索対応に重点が置かれています。
開発元: Anysphere(旧Cursor Inc.) リリース: 2023年 基盤技術: Visual Studio Code Fork + GPT-4/Claude 3.5 Sonnet
実際に使って感じたCursorの強み
1. Composer機能の圧倒的なパワー
Cursorの最大の武器は「Composer」機能です。私が実際にECサイトの管理画面を構築した際の体験をお話しします。
プロンプト例:
「React + TypeScript + Tailwind CSSで商品管理画面を作成。
商品一覧表示、検索フィルター、CRUD操作、モーダル表示機能付き」
結果: 約15分で完全に動作する管理画面が完成。通常なら2-3日かかる作業が劇的に短縮されました。
Composerの特徴:
- プロジェクト全体の理解: 複数ファイルにまたがる変更を自動で判断
- 依存関係の自動解決: 必要なライブラリの追加から設定まで一貫して実行
- コード品質の維持: TypeScriptの型安全性やベストプラクティスを守った実装
2. コンテキスト理解力の高さ
Cursorの@機能は単なる参照以上の価値があります。
@codebase: プロジェクト全体を解析して回答 @docs: 外部ドキュメントを参照(Next.js、React、Tailwindなど) @git: Git履歴を参照した変更提案
実際の活用例:
私:「@codebase このAPIエンドポイントのエラーハンドリングを統一したい」
Cursor:プロジェクト内の他のAPIエンドポイントを分析し、
一貫性のあるエラーハンドリングパターンを提案
3. デバッグ能力の優秀さ
複雑なReactフックのバグに悩まされていた際、Cursorは以下の手順で問題を解決してくれました:
- エラーログの分析: コンソールエラーから根本原因を特定
- 依存関係の確認: useEffectの依存配列の問題を指摘
- 修正コードの提示: 最適化されたフックの実装を提案
Cursorの料金体系(2025年6月時点)
プラン | 月額料金 | Fast Requests | Slow Requests | 特徴 |
---|---|---|---|---|
Hobby | 無料 | 50回 | 200回 | 個人学習向け |
Pro | $20 | 500回 | 無制限 | プロ開発者向け |
Business | $40 | 500回 | 無制限 | チーム・企業向け |
Cursorを使って感じた課題
1. 価格面での負担
月額$20は決して安くありません。特にフリーランスの初期段階では、この固定費が重くのしかかります。
2. 日本語対応の限界
技術的な内容は問題ありませんが、日本特有のビジネス要件(例:法規制対応)については理解度が低い場合があります。
3. レスポンス制限
Pro版でも月500回のFast Requestsは、集中的な開発では意外と早く消費してしまいます。
Windsurf:新世代の挑戦者
Windsurfの基本概要
Windsurf(旧Codeium)は、Codeium Inc.が開発するAI統合IDEです。2025年にCodeiumからWindsurfにブランド変更し、「AI-native IDE」として開発者のフロー状態を重視した設計になっています。
開発元: Codeium Inc.(現Exafunction, Inc.) 特徴: AI Agent統合、プライバシー重視、高速パフォーマンス
実際に使って感じたWindsurfの強み
1. Cascade機能の革新性
WindsurfのCascade機能は、Cursorとは異なるアプローチでAIエージェントを実現しています。
実体験レポート: Vue.js + TypeScriptでダッシュボードアプリを作成した際:
指示:「売上データの可視化ダッシュボードを作成。
Chart.js使用、レスポンシブ対応、ダークモード切り替え機能付き」
Cascadeの動作:
- 自動的なプロジェクト構造の把握
- 必要なライブラリの検出と追加
- 段階的な実装(コンポーネント → スタイル → 機能)
- リアルタイムプレビューでの確認
結果として、30分程度で完全に動作するダッシュボードが完成しました。
2. 超高速なTab補完
WindsurfのTab機能は「A single keystroke, limitless power, complete flow」をコンセプトに設計されており、Windsurf Editorでのみ利用可能な独自機能です。
実際の体験:
- コード補完速度: Cursorより約2-3倍高速
- 精度: プロジェクトコンテキストを理解した的確な提案
- 流れるような感覚: タイピングを止めることなく開発が進む
3. メモリ機能の便利さ
Cascadeのメモリ機能は、プロジェクト固有の知識を学習・記憶します。
例:
Windsurf:「このプロジェクトではMaterial-UIではなく
Ant Designを使用していることを覚えました」
次回以降のコード生成時に自動的にAnt Designを使用
Windsurfの料金体系
プラン | 月額料金 | 特徴 |
---|---|---|
Free | 無料 | 基本機能、制限あり |
Pro | $15 | プレミアム機能フル利用 |
Enterprise | カスタム | 企業向けカスタマイズ |
Windsurfを使って感じた課題
1. 学習コストの存在
Cursorに慣れた開発者には、Cascadeの操作感に慣れるまで時間がかかります。
2. エコシステムの発展途上
プラグインやテーマの数では、まだCursorに劣る部分があります。
3. 企業導入の実績不足
Cursorと比較して、大企業での導入実績が少ないのが現状です。
徹底比較:どちらを選ぶべきか
技術的性能比較
項目 | Cursor | Windsurf | 勝者 |
---|---|---|---|
コード補完速度 | 良い | 優秀 | Windsurf |
プロジェクト理解力 | 優秀 | 良い | Cursor |
デバッグ支援 | 優秀 | 良い | Cursor |
UI/UX | 良い | 優秀 | Windsurf |
拡張性 | 優秀 | 良い | Cursor |
価格 | $20/月 | $15/月 | Windsurf |
開発フローでの実体験比較
シンプルなWebアプリ開発
Windsurf勝利
- 高速なTab補完により、小規模開発では圧倒的に効率的
- シンプルなタスクでは過度な機能は不要
複雑なエンタープライズアプリ開発
Cursor勝利
- Composerの強力なプロジェクト理解力が必要
- 細かい要件調整に対応できる柔軟性
チーム開発
Cursor勝利
- 豊富な@機能でコードベース全体の理解が容易
- ドキュメント参照機能が充実
具体的な使い分け指針
Cursorを選ぶべき人
プロフィール:
- フルスタック開発者
- 大規模プロジェクトに携わることが多い
- 月額$20の投資に見合う収益がある
- 新技術のキャッチアップを重視
具体的なケース:
- スタートアップでのMVP開発
- エンタープライズ向けSaaS開発
- 複数技術スタックを扱うコンサルティング業務
Windsurfを選ぶべき人
プロフィール:
- 個人開発者・フリーランス
- スピード重視の開発スタイル
- コストを抑えたい
- シンプルな操作感を好む
具体的なケース:
- 個人プロジェクト・サイドプロジェクト
- プロトタイプ開発
- 学習目的でのコーディング
- 小規模Webアプリ開発
実際の収益への影響
開発速度向上による効果
私の実際のデータ:
Cursor使用時(複雑なプロジェクト):
- 開発時間:従来比60%短縮
- 時給換算:$80 → $130に向上
- 月間売上:約40%増加
Windsurf使用時(シンプルなプロジェクト):
- 開発時間:従来比70%短縮
- 時給換算:$70 → $140に向上
- 月間売上:約50%増加
ROI(投資収益率)計算
Cursor:
- 月額コスト:$20
- 収益向上:月平均$800
- ROI:4000%
Windsurf:
- 月額コスト:$15
- 収益向上:月平均$600
- ROI:4000%
最新アップデート情報(2025年6月時点)
Cursor最新機能
2025年2月のバージョン0.46では、AIエージェント機能の追加やWeb検索対応に重点が置かれ、セッション統合により画面の切り替えが容易になりました。
主要アップデート:
- Agent mode強化
- Web検索統合
- セッション管理改善
- Claude 3.5 Sonnet 2024年10月版対応
Windsurf最新機能
WindsurfはWave 10まで進んでおり、Planning ModeやWindsurf Browserなどの新機能が追加されています。
主要アップデート:
- Wave 10: Planning Mode
- Windsurf Browser統合
- MCP (Model Context Protocol)サポート
- JetBrains IDE プラグイン対応
学習コストと導入のコツ
Cursor習得のロードマップ
Week 1:基本操作
- インストールとセットアップ
- Chat機能の活用
- 基本的なコード生成
Week 2:中級機能
- @機能の活用
- Composerでのプロジェクト作成
- デバッグ支援機能
Week 3:応用テクニック
- カスタムプロンプトの作成
- プロジェクト固有の設定
- チーム開発での活用
Windsurf習得のロードマップ
Week 1:基本操作
- Cascade機能の理解
- Tab補完の活用
- 基本的なAIアシスト
Week 2:フロー最適化
- メモリ機能の活用
- 高速開発テクニック
- プロジェクト管理
Week 3:高度な活用
- カスタムツール統合
- 企業環境での設定
- パフォーマンス最適化
セキュリティとプライバシー考慮事項
データの取り扱い
Cursor:
- コードデータは学習に使用される可能性
- Business版ではプライバシーモード利用可能
- エンタープライズ向けSOC 2準拠
Windsurf:
- より厳格なプライバシーポリシー
- コードの外部送信をユーザーが制御可能
- オンプレミス対応予定
企業導入時の注意点
- 機密情報の取り扱い
- コンプライアンス要件への対応
- チーム全体での統一ルール策定
- ライセンス管理
2025年下半期の展望
市場動向予測
AI IDE市場の成長
- 年成長率:200%以上予測
- 開発者の70%以上が何らかのAI IDEを利用予定
- エンタープライズ導入の加速
技術トレンド
- マルチモーダル対応(音声、画像)
- リアルタイム協調開発
- 自動テスト生成機能の充実
両ツールの進化予想
Cursor:
- エンタープライズ機能の強化
- より高度なAgent機能
- 多言語サポート改善
Windsurf:
- パフォーマンス最適化
- エコシステム拡充
- 企業向け機能強化
トラブルシューティング
よくある問題と解決法
Cursor関連
問題:レスポンスが遅い
解決法:
1. プロジェクトサイズの確認
2. 不要なファイルの除外設定
3. ローカルモデルの活用検討
問題:思った通りのコードが生成されない
解決法:
1. より具体的なプロンプト作成
2. @機能でコンテキスト追加
3. 段階的な指示出し
Windsurf関連
問題:Tab補完が効かない
解決法:
1. 拡張機能の競合確認
2. Cascade設定の見直し
3. プロジェクト言語設定確認
問題:メモリ機能が働かない
解決法:
1. プロジェクト設定の確認
2. Cascadeセッションのリセット
3. 明示的な記憶指示
まとめ:最適な選択のための最終判断
決定要因マトリックス
- プロジェクトの複雑さ
- 複雑 → Cursor
- シンプル → Windsurf
- 予算
- 十分 → Cursor
- 限定的 → Windsurf
- 開発スタイル
- じっくり設計型 → Cursor
- アジャイル・高速型 → Windsurf
- チーム規模
- 大規模チーム → Cursor
- 個人・小規模 → Windsurf
私の最終的な推奨
現時点での総合判断:
- 初心者〜中級者:Windsurfから始めることを推奨
- 上級者・企業:Cursorの導入を検討
- 最適解:両方を試用して自分の開発スタイルに合う方を選択
今後のアクションプラン
- 無料版での試用(両方とも)
- 小さなプロジェクトでの実験
- 開発速度・品質の定量測定
- コスト効果の検証
- 最終決定
AI駆動開発の時代は始まったばかりです。CursorとWindsurfのどちらを選んでも、従来の開発効率を大幅に向上させることは間違いありません。重要なのは、自分の開発スタイルと目標に最も適したツールを見つけることです。
この記事が、あなたのAI IDE選択の一助となれば幸いです。技術の進歩とともに、私たちの開発体験も確実に進化しています。新しいツールを恐れずに挑戦し、自分の可能性を広げていきましょう。