はじめに:私の市民開発体験談
こんにちは。私は5年前まで営業部門で働く、プログラミング経験ゼロの一般的な会社員でした。しかし今では、ノーコードツールを活用した市民開発者として、本業の傍らで月収30万円を超える副収入を得ています。この記事では、そんな私の実体験を交えながら、市民開発者としてスキルアップし、収益を生み出すまでの道のりを詳しく解説します。
私が市民開発に出会ったのは、2020年のコロナ禍がきっかけでした。リモートワークが始まり、部署内の業務効率化が急務となったとき、情報システム部門への依頼は数ヶ月待ちという状況に直面したのです。「自分で何とかできないか」と調べていたときに出会ったのが、ノーコード開発でした。
最初は半信半疑でしたが、実際に手を動かしてみると、たった1週間で簡単な顧客管理アプリを作ることができました。その瞬間、「これは革命的だ」と感じたのを今でも覚えています。
市民開発者とは何か?定義と現状
市民開発者の定義
市民開発者(Citizen Developer)とは、プログラミングをはじめとした開発者スキルを持たない非エンジニアが、ローコード・ノーコードツールなどを駆使してシステム開発、デジタル化を推進する人のことです。
私自身も最初は「市民開発者って何?」という状態でした。しかし、実際に活動してみると、これは単なる技術的な役割ではなく、ビジネスの現場の人間が、現場の問題を実際に解決していくことが出来るソフトウェアやサービスを開発する人だということが分かりました。
市民開発者が注目される理由
現在、市民開発が注目される背景には以下の要因があります:
1. IT人材不足の深刻化 日本では少子高齢化による労働人口の減少が進んでいます。もちろんIT人材も今後不足していくことが予測されます。実際、私の会社でも情報システム部門は常に人手不足で、新しいシステム開発の要望が山積みになっていました。
2. DX推進の必要性 あと3年足らずで、いわゆる「2025年の崖」が訪れる。そのため、急ピッチでデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている企業も多いという状況下で、従来の開発手法では対応しきれないニーズが発生しています。
3. アプリケーション需要の爆発的増加 IDC (International Data Corporation)は、2025 年までに 7 億 5,000 万以上のアプリが開発されると予測しています。この膨大な需要に対して、従来のプロ開発者だけでは対応できないのが現実です。
ノーコード開発の基礎知識
ノーコードとは何か
ノーコード開発とは、プログラミングやコーディングなどの専門的な知識・スキルを使わずに開発を行う方法のことです。私が最初に驚いたのは、テンプレートの使用やドラッグ&ドロップなどで、アプリケーション・Webサイトなどを作成できるという点でした。
ローコードとの違い
よく混同されがちですが、ノーコードとローコードには明確な違いがあります:
- ノーコード:コーディング作業が一切不要
- ローコード:最小限のコーディングが必要
私の経験では、初心者はまずノーコードから始めることをお勧めします。実際、私も最初の半年間はノーコードツールのみを使用していました。
市民開発者に必要なスキルセット
基礎スキル
市民開発者になるために必要なスキルは、思っているよりもハードルが低いです。私の経験から、以下のスキルがあれば十分スタートできます:
1. 基本的なPC操作スキル ExcelやPowerPointが使えるレベルで十分です。ノーコード開発では「式(expression)」がたくさん出てきます。これは具体的にはExcelやGoogle Spreadsheetでセルに関数を使った式を使えれば十分というレベルです。
2. 論理的思考力 「式」を上手に使う上でロジック(論理)は重要です。ビジネスアプリは一言でいうと「データ処理」ですから、データベースの概念を抽象レベルである程度理解していると市民開発者としてはかなり有能になります。
3. 業務理解力 これが最も重要です。現場の業務を深く理解している人ほど、実用的なアプリケーションを作ることができます。
段階的なスキルアップ方法
私が実際に行ったスキルアップの方法をステップごとに紹介します:
Step 1: 学習準備期間(1-2週間)
- ノーコード開発の基本概念を理解
- 主要なツールの特徴を調査
- 作りたいアプリケーションの明確化
Step 2: 基礎実践期間(1-2ヶ月)
- 簡単なツールから実際に手を動かして学習
- チュートリアルやサンプルアプリの作成
- 小さな業務改善アプリの開発
Step 3: 応用実践期間(2-3ヶ月)
- より複雑なアプリケーションの開発
- 他のツールやサービスとの連携
- データベース設計の基礎学習
Step 4: 収益化準備期間(3-6ヶ月)
- ポートフォリオの作成
- 案件獲得のためのスキル向上
- マーケティングスキルの習得
おすすめノーコードツール選択ガイド
初心者向けツール
私が最初に使用したツールと、その特徴を紹介します:
1. Bubble Bubbleを用いれば、ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、プログラミングの知識がなくても、自分のアイデアを簡単に形にすることができます。私もBubbleから始めましたが、学習コストが低く、かつ高機能なアプリを作れるのが魅力です。
2. Kintone 日本企業には特におすすめです。業務アプリ作成に特化しており、直感的な操作で顧客管理や案件管理システムを構築できます。
3. PowerApps Microsoft製品との親和性が高く、既にOffice365を使用している企業では導入しやすいツールです。
用途別ツール選択
Webサイト制作系
- Webflow:デザイン性の高いサイト制作
- Wix:初心者向け、豊富なテンプレート
- Studio:日本語サポート充実
アプリ開発系
- Adalo:モバイルアプリ制作
- Glide:Google Spreadsheetベース
- FlutterFlow:高度なモバイルアプリ開発
業務システム系
- Kintone:日本企業向け業務アプリ
- PowerApps:Microsoft環境での活用
- AppSheet:Google環境での活用
実践:最初のアプリケーション開発
プロジェクト選定のポイント
初めてのアプリケーション開発では、以下の基準でプロジェクトを選ぶことをお勧めします:
- 身近な課題を解決するもの
- シンプルな機能で完結するもの
- 効果が明確に見えるもの
- 短期間で完成できるもの
私の場合、最初に作ったのは「営業部門の顧客訪問管理アプリ」でした。Excelで管理していた訪問予定を、モバイルで確認・更新できるシンプルなアプリです。
開発プロセス
1. 要件定義(1-2日)
- 現在の業務フローの整理
- 解決したい課題の明確化
- 必要な機能の洗い出し
- 成功指標の設定
2. 設計(2-3日)
- 画面遷移の設計
- データ構造の設計
- ユーザーインターフェースの設計
3. 開発(1-2週間)
- ツールの基本操作を覚えながら開発
- 機能を一つずつ実装
- テストとデバッグ
4. 運用・改善(継続的)
- ユーザーからのフィードバック収集
- 機能追加・改善
- 次のプロジェクトへの活用
成功事例と学び
企業での成功事例
味の素の事例 具体的には「食品の原料を検索できるアプリ」や「市場調査ができるアプリ」などが開発されました。市民開発を行う「Power Platform市民開発コミュニティ」の参加者は全社で450名以上が参加しているなど、組織的な取り組みが成功につながっています。
カルビーの事例 出社管理をリアルタイム化するアプリケーションを、ServiceNowのNow Platformを使って実働8日間で開発した事例があります。従来なら数ヶ月かかる開発を、わずか8日で完成させたのは驚異的です。
個人の成功体験
私自身の体験も含めて、市民開発者として成功するパターンをいくつか紹介します:
パターン1: 社内業務改善からスタート 私のように、まず自分の業務を効率化するアプリを作成し、それが社内で評価されて他部署からも依頼が来るようになるパターンです。
パターン2: 副業・フリーランスへの展開 社内での実績を積んだ後、外部案件を受注して収益を上げるパターンです。学習開始3ヶ月で月売上30万円を達成した事例もあります。
パターン3: コンサルティング業務への発展 ノーコード開発のスキルを活かして、企業のDX推進をサポートするコンサルタントとして活動するパターンです。
収益化戦略とキャリアパス
収益化の段階
市民開発者として収益を得るには、以下の段階を踏むことが効果的です:
Stage 1: スキル蓄積期(0-6ヶ月)
- 基本スキルの習得
- ポートフォリオの作成
- 社内での実績作り
Stage 2: 小規模案件期(6ヶ月-1年)
- 知人・友人からの小さな案件
- クラウドソーシングでの実績作り
- 単価:5万円-15万円/案件
Stage 3: 本格展開期(1年-2年)
- 直接契約での案件獲得
- 継続案件の獲得
- 単価:20万円-50万円/案件
Stage 4: 専門化・拡大期(2年以降)
- 特定分野での専門性確立
- チームでの案件対応
- 月収:30万円-100万円以上
具体的な収益モデル
1. アプリケーション開発受託 中小企業向けの業務アプリ開発を受託するモデルです。相場は10万円-50万円程度で、私も現在の収入の6割がこの分野からです。
2. システム改善・効率化コンサルティング 既存業務の分析と改善提案を行うモデルです。月額5万円-20万円の継続契約が一般的です。
3. 教育・研修サービス 企業向けの市民開発研修やワークショップを提供するモデルです。1日研修で20万円-50万円の収入が期待できます。
4. テンプレート・ツール販売 よく使われる業務アプリのテンプレートを作成・販売するモデルです。1つ3,000円-10,000円で販売し、継続的な収入が得られます。
トレンドと将来展望
2025年のノーコード市場予測
2025年はこのノーコード教育のプレイヤーが目立ってくる一年になるでしょう。システムを受託開発している会社は、自社事業の変化の一年になるかもしれませんと予測されています。
Gartnerによると、2025年までにエンタープライズアプリケーションの70%がローコード/ノーコード技術で開発されるとされており、2023年の25%以下から大幅に増加する見込みです。
AI統合の進展
2025年の最も革新的なローコードトレンドの1つは、開発プロセスへのAIと生成AIの統合です。AI駆動のローコードプラットフォームは、コード生成からテスト、デプロイメントに至るまで多くの開発プロセスを自動化できます。
私も最近、AI機能を活用したノーコードツールを使い始めましたが、開発スピードが格段に向上しています。
市民開発者の役割拡大
市民開発者の台頭は機会と課題の両方をもたらします。組織全体の敏捷性と協力関係が向上する一方で、アプリケーションのセキュリティ、コンプライアンス、スケーラビリティを確保するための強固なガバナンスモデルが求められます。
学習リソースとコミュニティ
おすすめ学習方法
1. オンライン学習プラットフォーム
- Udemy:体系的な動画コース
- YouTube:無料チュートリアル
- 各ツールの公式ドキュメント
2. 書籍・電子書籍
- 「基礎から学ぶ ノーコード開発」
- 「ノーコード大全 アプリ開発編」
- 各ツール専門の技術書
3. 実践型学習 株式会社ふえんが運営している「ノーコードによる市民開発研修」では、研修中に実務で使える業務アプリを開発し、運用する伴走型研修のような、実践的な学習プログラムがおすすめです。
コミュニティ参加の重要性
市民開発者として成長するには、コミュニティへの参加が重要です:
オンラインコミュニティ
- ノーコード関連のSlackワークスペース
- Facebook/Discordグループ
- 各ツールの公式コミュニティ
オフラインイベント
- ノーコードサミット
- 各ツールのユーザー会
- 地域のIT勉強会
私も定期的にコミュニティイベントに参加していますが、情報収集だけでなく、案件紹介や協業の機会も得られています。
よくある課題と解決策
初心者がつまずきやすいポイント
1. ツール選択の迷い 最初は一つのツールに集中することをお勧めします。私も最初は複数のツールに手を出して混乱しましたが、Bubbleに集中してから急速に上達しました。
2. 技術的な壁 ノーコードツールと言ってもプログラミングに関する知識が必要なツールもあります。また、ツールの使い方も覚えなくてはなりません。システム開発前には一定の研修が必要です。焦らず、基礎から学習することが重要です。
3. セキュリティ・ガバナンスの課題 セキュリティなど一定の品質が必要な部分については、情報システム部門やベンダーのサポートが必要です。企業での活用時は、適切なガバナンス体制を整えることが重要です。
成功するためのマインドセット
1. 完璧を求めすぎない 最初から完璧なアプリを作ろうとせず、まずは動くものを作ることを優先しましょう。
2. ユーザー視点を忘れない 技術に夢中になりがちですが、常にエンドユーザーの視点を忘れずに開発することが重要です。
3. 継続的な学習姿勢 ノーコード分野は急速に進化しています。常に新しい情報をキャッチアップする姿勢が必要です。
まとめ:市民開発者として成功するために
私がノーコード開発を始めてから5年が経ちました。この間に感じた最も重要なことは、「技術は手段であり、目的ではない」ということです。市民開発者として成功するには、技術的なスキルだけでなく、ビジネス課題を理解し、ユーザーに価値を提供する姿勢が不可欠です。
現在、2025年度には現在の約3倍である1,500億円を超える見通しとされるノーコード市場で、市民開発者の需要は確実に高まっています。また、ノーコード/ローコードによって、エンジニアではないソフト開発者、言うなれば”シチズンデベロッパー(市民開発者)”が増えているという時代の流れも追い風となっています。
これから市民開発者を目指す皆さんには、以下のポイントを意識していただければと思います:
- 小さく始めて、継続的に改善する
- コミュニティとのつながりを大切にする
- 技術だけでなく、ビジネススキルも磨く
- 常にユーザーファーストの視点を持つ
- 失敗を恐れず、挑戦し続ける
市民開発の世界は、まだまだブルーオーシャンです。今こそが、市民開発者として飛躍するチャンスです。この記事が、皆さんの市民開発者への第一歩の助けになれば幸いです。
最後に、市民開発は単なる技術習得ではなく、デジタル社会における新しい働き方の実現でもあります。皆さんも、この革新的な分野で自分らしいキャリアを築いていってください。
この記事は、実際の市民開発者としての経験と、最新の業界動向を基に作成されています。ノーコード開発に関する最新情報は、各ツールの公式サイトや関連コミュニティで確認することをお勧めします。